成人向催眠小説 お悩み承ります
彼女は十八歳、高校三年生の水品静香(みずしなしずか)。
けれど、それは仮の姿。本当の姿は、催眠術で学校の平和を保つ、スゴ腕催眠
術師なのである。
自分の能力に気付いたのは、弟にテレビでやっていた催眠術を真似してかけた
のがきっかけだった。
嘘のように弟が催眠術にかかって、私が言った通りに楽しそうにリズムよく踊
りだしてしまった。それがホントに嘘みたいだったので、今度は弟に服を脱ぐ
ように命令したら、パンツまで平気で脱いでしまった。
それから弟で実験を繰り返していると、どうやら手を直接相手に触れて、心の
中で眠くなれ〜、眠くなれ〜って念じると、トランス状態に出来ることがわか
った。
トランス状態とは、起きている時と眠っている時の中間に位置している状態と
言われていて、この状態のときに暗示が相手に浸透しやすいという。
一般的に催眠を相手にかける時は、相手をリラックスさせてトランス状態して、
そして暗示を与えていく。
けど、私はそんなコメンドクサイことをしないで催眠術をおこなうことが出来
る。
この力を使って、何か出来ないかな〜と思って閃いたのが、高校生のお悩み解
決。
具体的には、催眠術を使って人に言いにくいような悩みを聞き出し、私に出来
ることなら協力をするというもの。
私はこれを『オシゴト』と呼んでいる。
そして今日も、悩める相談者が私を待っている。
キーン、コーン、カーン、コーン……。
放課後、部活動をする生徒達と家に帰る生徒達。
私は美術室で、同じクラスの安藤君が来るのを待っていた。
コン、コン……。
「はい、どうぞ」
ガラガラガラ……。
「あ、水品さん。何、用って?」
安藤君が美術室に入って来た。
昼休み、私は安藤君に「放課後、美術室に来て」と言っていた。
「呼び出したりなんかしてごめんね、そこの椅子に腰掛けてくれる?」
そう言って、パイプ椅子に座らせると、安藤君の肩を掴んで、安藤君に眠るよ
うに心の中で念じた。
「水品さん? どう……い……?」
ガクッと安藤君の頭が垂れ下がった。
「よしっ、OK!」
安藤君を呼んだのは、私の友達である八島沙織ちゃんのお悩み解決の為である。
沙織ちゃんは安藤君のことが好きだけど、安藤君が自分のことを好きなのかが
わからなくて、告白出来ないでいた。だから、安藤君の気持ちを催眠術を使っ
て確かめて、沙織ちゃんに教えてあげようと思うのだ。
「安藤君、聞こえる?」
「はい……」
「質問するから答えてね?」
「はい……」
私は戦々恐々な気持ちで、安藤君に訊いてみた。
「同じクラスの八島沙織ちゃん。知ってる?」
「はい……、知ってます……」
「その八島さんのことなんだけど、安藤君は好き?」
「はい……、好きです……」
おおー、やった〜、沙織ちゃんやったよ〜、安藤君も好きだって、良かったね
〜。
私は最悪のシナリオを回避できたので、思わずガッツポーズを披露してしまっ
た。
「そうか、そうか。うん、うん」
相思相愛なら、話は早い。後は沙織ちゃんにそれとなく伝えればいいだけだ。
「よし、安藤君いい? 心の中で三十秒数えると、放課後に私に呼び出された
ことも、今訊かれた質問もすべて忘れてしまうの。そして気持ちよく目が覚め
ます」
「はい……」
「じゃあ、今から心の中で三十秒数えて!」
「はい……」
よしよし。私はそそくさと美術室を出て、ドアの横で立ち止まった。
……一分後。
ガラガラガラ……。
「きゃっ!」
「あっ、悪い!」
美術室から出てきた安藤君が、私とぶつかりそうになった。
「あれ、美術室で何してたの安藤君?」
「いや……、何もしてないけど。何で俺、美術室に居たんだろう?」
「えっ、どういうこと? ちょっと〜、ぼぉーっとし過ぎじゃない、安藤君?」
「ははは……、そ、そうかもしれない。あっ、そうだ水品さん美術部か。ごめ
ん邪魔しちゃって。じゃ、さよなら!」
何も憶えていないらしく、安藤君はそう言って帰った。
次の日、私は沙織に昨日のことを伝えた。
でも、私が安藤君に催眠術を使って……、なんてことは沙織には言っていない。
たまたま廊下で男友達と話をしていた安藤君が、沙織のことが好きだと言って
いたと、嘘をついた。
私が催眠術を使えると知っているのは、この学校では二年生の、私の弟だけだ。
だから、私がやっている『オシゴト』も、皆は知らない。(知られちゃいけな
いんだけど……)
「ありがと〜、しずか〜!」
「両思いなのがわかったんだから、告白しなよ?」
「うん! わかってる」
沙織ちゃんはとても喜んでくれた。
それから直ぐ、沙織ちゃんと安藤君は付き合い始めた。これで、沙織ちゃんの
悩みを解決出来たのだが……。
……三ヶ月後。
「さあ、お弁当、お弁当〜」
「しずか〜……」
弁当箱の包みを開こうとした時、助けを求めるような沙織ちゃんの声が聞こえ
た。
「ど、どうしたの沙織ちゃん?」
「ちょっと、話聴いてほしいの〜……」
困り顔の沙織ちゃんに連れられて、学校の中庭のベンチにいった。
「……で、どんな話?」
思いつめたような顔で、沙織ちゃんが口を開いた。
「安藤君と付き合い始めて三ヶ月になるんだけど……」
私は、うん、うんと頷いた。
「それで……、その……、安藤君とエ、エッチとか……、したいなって思うよ
うになって……」
「うん、それで?」
「その……、そういう時……、安藤君にどう伝えればいいのか、わからなくて
……」
沙織ちゃんの顔が耳まで真っ赤になっていた。
「そりゃー、そのときの空気でエッチするんじゃない?」
「く、空気って、どんな?」
「そうだね〜、ん〜、う〜、あ〜、ちょっと経験ないからわからないなー……」
「そっか……。あっ、ごめんね! こんなこと訊いちゃって」
私は沙織ちゃんの為に何か出来ないかと思って、あることを思いついた。
「沙織ちゃん! 今日の放課後、安藤君を連れて美術室まで来てくれない?」
「え、どうして?」
「いいから! お願い!!」
「わ、わかったわ……」
そして放課後、美術室に安藤君と沙織ちゃんがやって来た。
「そこの椅子に二人とも座って」
不思議そうな二人をパイプ椅子に横に並べて座らせると、私は後方から二人を
抱えるように肩を掴んだ。そして、心の中で二人に、眠るように念じた。
二人はほぼ同時に目を瞑って、だらりと力が抜けたようになった。
私は安藤君に訊いた。
「え〜、安藤君。安藤君は、沙織ちゃんとエッチしたいと思っていますか?」
「はい……、思っています……」
やった〜、またまた同じことを思ってた〜、沙織ちゃん、良かったね〜。
「そうか、そうか。わかった! 私が人肌脱ぎましょう!」
私は二人の関係をより良くしようと思った。
「二人とも聞こえますか?」
「はい……」「はい……」
「今から目を覚ますとムラムラとした気分になります。それは、オナニーを三
年間もしておらず、身体の中に性欲が溜まっているからです。その為、二人は
エッチしたくて堪らなくなってしまいます。わかりましたか?」
「はい……」「はい……」
「三十秒、心の中で数えると目が覚めて、さっき言ったようになります。そし
て、目が覚めると、私が美術室に呼んだこともすべて忘れてしまいます。安藤
君と沙織ちゃんは自分達の意思で、一緒に美術室に来ました。わかりましたね?」
「はい……」「はい……」
「では、心の中で三十秒数えてください!」
「はい……」「はい……」
二人の情事の邪魔をする、そんな野暮なことは出来ないので、私は急いで美術
室を出てドアを閉めた。
だが、置いてくるモノがあったことを思い出した私は、慌てて教室に戻り、そ
れを置いてくると、また戻って教室を出た。
ドアを閉めて五秒後、少し二人の慌てたような声が聞こえたが、すぐにガサガ
サという服の擦れる音と、カチャンカチャンというズボンのベルトを外す音が
聞こえて、美術室横の廊下に声が漏れ出した。
「あんっ、あんっ…………」
「き、気持ちいいよ…………」
「も、もっと突いて…………」
「あっ、はっ、はっ、はっ…………」
美術室のドアの前に居た私は、この声が誰かに聞かれないかと気が気じゃなか
った。
お願いだからもう少し静かにやってよ〜、と私が思っていると、美術室ではな
いほうから声がした。
「あれ? 姉ちゃんじゃん」
「さっ、聡……!」
「何してんのそんなとこでコソコソ? えっ、この声は?」
よりにもよって、うちの弟の聡に見つかってしまった。
私は何も言わずに弟を引っ張って、美術室から少し離れた。そして事情を説明
した。
「姉ちゃん、また催眠使ってオシゴトとかいうわけわかんないことしてんの?」
「もう、うるさいわねー。私の力で助かってる人もいるのよ! あと、なんで
あんたこんなところに居たのよ?」
「最後の授業で工作室にいった時、忘れ物したみたいだから取りに来たんだよ。
そしたら美術室の前に不信な姉ちゃんが居たから。だけど、美術室でセックス
してた人、妊娠したらどうするのさ?」
「まあ、その辺は私に抜かりはないわ。ちゃんとコンドームを置いておいたか
ら」
「コンドーム? わざわざ買ったの?」
「お財布にいつも入れてるのよ。いつチャンスが訪れるかわからないし。いざ
エッチしようって時にコンドームを持ってない、だらしない男の子もいるだろ
うと思ってさ」
「姉ちゃんなんかとする物好き、一人もいないよ」
「それはどうかしら〜?」
私は聡の腕を掴んだ。
「さ〜と〜し〜」
「んっ……、えっ?」
廊下で壁にもたれかかって座っている聡に、私は声をかけた。
「あっ! ねえ〜ちゃん!!」
私を見るなり、聡は立ち上がって私を抱き締めた。そして、私の胸にスリスリ
とほお擦りを始めた。
「姉ちゃ〜ん、すき〜!!」
「あらあら。聡はお姉ちゃんが好きなんだ〜」
聡の大きなペニスがズボン越しに、私の太ももにグイグイ当たっている。
「ね、姉ちゃん! もう、我慢できない!」
そう言うと聡はズボンのチャックを下げた。すると、中から勃起したペニスが
ピョンと飛び出してきた。
見かねた私は「はい、終了!」と、言いながら、聡の頭をゲンコツで叩いた。
ゴツッ……!
「……いてっ! な、何すんだよ!」
「どう? お姉様の魅力に、あんたもメロメロだったでしょ?」
「なっ……!!」
私は聡に「お姉ちゃんが大好きになる」と、催眠をかけた。聡は暗示によって
私が大好きだと思い込み、まるで自分が昔からそう思っているかのように錯覚
していた。ホントはしたくない変なことでも、自分の意思だと思って平気でや
ってしまっていた。
催眠でとはいえ、弟に好きだって言われると少し気分がいい。
「ば、ばか姉ちゃん!」
姉に迫ったことが相当恥ずかしかったのか、ズボンから飛び出したペニスを慌
てて仕舞い、聡は一目散に逃げていった。
そんな美術室でのこともあり、沙織ちゃんと安藤君は一段とラブラブになり、
交際のほうは今も順調のようだ。
これにてお悩みは解決した。
だけど、まだまだ悩める相談者が私を待っている。
さて……、今度はどんなお悩みを解決してほしいのかな?
スゴ腕催眠術師、水品静香のオシゴトは、まだ終わらない。